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犬の胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)とは、犬の胆嚢内にゼリー状の粘液物質が過剰に蓄積した状態です。胆汁の分泌を阻害するので様々な消化器系に悪影響を及ぼし、進行すると黄疸の症状が現れ胆嚢破裂による腹膜炎などで死亡する可能性もある怖い疾患です。
この病気は、胆嚢内壁から粘液が異常に分泌され、胆嚢内に粘液物質がたまることで腫瘍が形成されます。犬の胆嚢粘液嚢腫は一般的に症状を表さないことが多く、偶然発見されることもすくなくありません。このページでは 予防や早期発見のため、犬が胆嚢粘液嚢腫を発症する原因や一般的な症状を、動物病院を受診する際の前知識として、外科手術などの治療法についてもくわしく解説します。
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犬が胆嚢粘液嚢腫になる原因について
犬が胆嚢粘液嚢腫(たんのうねんえきのうしゅ)を発症する確かな原因については、現在のところまだ完全には究明されていません。ただ、想定できる原因として、胆汁や胆泥(胆汁が泥状になったもの)、胆石などが胆嚢癖を刺激し粘液の過剰分泌が起こると考えられています。
考えられる原因について、以下にもう少し詳しくまとめました。
炎症や感染:
・胆嚢内の炎症や感染が、粘液の過剰な産生を促進することがあります。これが胆嚢粘液嚢腫の原因となることがあります。
胆嚢結石
・胆嚢内に結石ができると、その周囲の組織に刺激を与え、粘液の過剰産生が起こるリスクがあり、それが原因となるケースです。
過剰な粘液分泌
・胆嚢の粘膜が異常に多くの粘液を産生する状態が、粘液嚢腫の原因となる可能性があります。この異常な粘液分泌の原因は明確ではありません。
胆嚢の機能障害
・胆汁の正確な制御や保存機能に関するトラブルが、胆嚢粘液嚢腫の原因となると考えられます。
高脂肪食
・高脂肪の食事が犬の胆嚢に過度の刺激を与え、胆汁の不均衡や胆嚢の機能不全を起こす。これが胆嚢粘液嚢腫の原因になるというケースです。
遺伝的関与
・最後は遺伝です。根拠は一部の犬種で、嚢粘液嚢腫の発生率が高いという報告があることです。これは遺伝的な傾向がある可能性が示唆されています。
嚢粘液嚢腫は特定の原因が確認されているわけではありませんが、遺伝的、炎症、感染、結石、粘液の異常産生、胆嚢の環境が組み合わさって発症する可能性があるとされています。
胆嚢粘液嚢腫の原因となる犬の病気について
犬が胆嚢粘液嚢腫を発症しやすいとされるいくつかの病気や状態について説明します。これらの疾患は同時多発的に併発する可能性が高いものなので、それぞれ注意が必要です。
高脂血症の犬
高脂血症は、血中脂質(コレステロールやトリグリセリド)濃度が異常に高い状態で、犬の高脂血症は胆嚢粘液嚢腫の発症リスクを増加させる可能性あり。
高脂血症の場合、汁中のコレステロール濃度が上昇し、胆嚢内で結晶や泡状の粘液を形成する傾向があり、これも粘液胆嚢腫の原因と考えられます。
詳しくは「犬の高脂血症の原因・症状・治療」、胆嚢粘液嚢腫と共通点が多い食事については「犬・高脂血症・食事レシピ」をご覧ください。
クッシング症候群 (副腎皮質ホルモン亢進症)の犬
クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンの過剰な分泌によって特徴づけられる内分泌障害です。この症候群は、脂質代謝に影響を与え、高脂血症になる可能性があります。
高脂血症と同様に、胆汁中の脂質濃度の上昇が胆嚢内の粘液の異常な増加を促進し、胆嚢粘液嚢腫のリスクを高めることになります。
甲状腺機能低下症の犬
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの不足によってられる状態で、代謝率の低下や脂質代謝の異常を起こします。
甲状腺機能低下症が胆嚢内の脂質代謝に影響を与えると、高脂血症と同様に胆嚢内の粘液の異常な増加が見られ胆嚢粘液嚢腫の原因となる可能性。
この病気の詳細は「犬の甲状腺機能低下症・症状・原因・治療」を、胆嚢粘液嚢腫と共通点が多い食事については「犬・甲状腺機能低下症・食事・レシピ」をそれぞれご覧ください。
胆泥症(たんでいしょう)の犬
胆泥は胆嚢内で汁成分が固まり、粘液と混ざって粘液嚢腫を促進することがございます。 高脂血症や脂質代謝の異常は、胆泥の形成を助ける可能性があります。
胆泥症の詳細は「犬・胆泥症・食事」をご覧ください。
肝炎の犬
肝臓が炎症を起こすと肝臓の正常な機能に影響を与えます。肝臓が正確に胆汁を生成または分泌できなくなると、胆汁の流れが滞り胆嚢粘液嚢腫のリスクが増加。
肝炎についての詳細は「犬の肝炎の原因・症状・治療」を、胆嚢粘液嚢腫と共通点が多い食事に関しては「犬・肝炎・食事・レシピ」をご覧くださいませ。
これらの疾患や状態が胆嚢粘液嚢腫の発症リスクを高める可能性があるため、犬がこれらの疾患を持っている場合、定期的な獣医師の診察や適切な管理が重要です。
胆嚢粘液嚢腫を発症しやすいとされる犬種について
胆嚢粘液嚢腫は、特定の犬種により発症しやすいことが報告されており、特に高脂血症のリスクが高い犬が挙げられます。以下に、これらの犬種について詳しく説明しますが、あらゆる犬種で発生する可能性があることも覚えておいてください。
シェトランド・シープドッグ
・シェトランド・シープドッグは、高脂血症になりやすいとされ、高脂血症は胆嚢粘液嚢腫のリスクの一つです。
コッカースパニエル
・コッカースパニエルも高脂血症にかかりやすい犬種であり、高脂血症が胆嚢粘液嚢腫の発症に関連しています。
シュナウザー
・シュナウザーもまた高脂血症になりやすく、また遺伝的要因による胆嚢粘液嚢腫のリスクも高いです。
ビーグル
・ビーグルは胆泥症にかかりやすいとされ、胆泥症は胆嚢粘液嚢腫のリスクの一つとなります。
シャーペイ
・シャーペイは皮膚のたるみやしわが特徴的な犬種で、皮膚と関連した問題があることから、これは胆嚢粘液嚢腫に高リスクです。
ただし、これらの犬種に属する個体がどこか胆嚢粘液嚢腫にかかるわけではありません。また、これらの犬種にあたる場合でも、定期的な健康診断と正しいケアが病気の予防に役立ちます。
胆嚢粘液嚢腫のサインを見逃さない!犬の症状をチェック
犬の胆嚢粘液嚢腫は、初期段階では症状がほとんど現れないこともあります。このため発見が遅れるこもと多いので日頃から観察し病気のサインを見逃さないことが大事です。
ただ、これから説明する症状は胆嚢粘液嚢腫に限定されず、他の疾患にも起こり得るため、どちらにしても獣医師の診断が必要となります。
食欲不振(食べない)の症状
・犬が普段の食事に興味を示さなくなることがあります。 食欲不振は、多くの疾患の典型的な症状であるため、他の病気の可能性も。
嘔吐(吐き戻しの症状)
・胆嚢粘液嚢腫が進行すると、嘔吐が何度も起こります。嘔吐は消化器系トラブルのサインです。
下痢の症状
・下痢もまた、消化器系の異常を示すしょうじょうになります。胆嚢粘液嚢腫によっても起こることがあります。
腹部に不快感を示す症状
・犬が腹部に圧迫感や不快感を感じることがあります。胆嚢粘液嚢腫によって胆嚢が膨らむことで腹部が膨満感を症状です。
体重減少(急激に痩せる)
・食欲不振、嘔吐、下痢などが続くと、犬の体重が減少することがあります。
黄疸の症状
・嚢粘液嚢腫が進行し、胆汁の流れが阻害される場合、犬の皮膚や粘膜が黄色くなる黄疸が現れます。
不安や興奮状態を示す症状
・痛みや不快感がある場合、犬が不安や興奮するといった症状が現れます。これは症状の一部です。
これらの症状が現れた場合、獣医師の診断が必要です。 胆嚢粘液嚢腫の診断には超音波やX線などの画像検査が行われ、適切な治療方法が検討されます。
犬が胆嚢粘液嚢腫と診断された場合の治療法について
次は、胆嚢粘液嚢腫の治療法について詳しく説明します。
胆嚢粘液嚢腫の内科治療について
内科治療は、胆嚢粘液嚢腫が軽度であり症状がまだ進行していない場合に選択されることがあります。高脂血症や胆汁の流れに関連する問題がある場合、食事療法も併用し、低脂肪食や特定の療法食が食事療法に最適です。
薬はコレステロール制御薬や胆汁酸結合剤、利胆剤ウルソなどを使用。これら利胆剤ウルソなどの薬は胆汁の粘液化を減少を助る作用があります。また、胆泥症や胆嚢粘液嚢腫の犬は肝臓、膵臓や消化器系へも負担をかけるため胃腸薬や肝臓薬、抗生物質などを別途使用することも。
内科治療では定期的な獣医師のフォローアップが重要で、犬の症状や状態の変化に注意することが大切です。
胆嚢粘液嚢腫の犬の外科手術について
外科手術は、胆嚢粘液嚢腫が進行し、症状が重度である場合、または内科治療が効果的でない場合に選択される治療法で、胆嚢粘液嚢腫の診断が出た犬は手術を要するケースが多いです。手術の目的は、胆嚢を摘出すること。この手術は一般的に胆嚢摘出術(胆嚢切除術または胆嚢摘出)と呼ばれます。
手術は犬の年齢、全体的な健康状態、手術に対する耐性などによって適応が異なります。獣医師は犬の具体的な状態を評価し手術の適応を決定。手術後、犬は回復期間を必要とし、特定の食事制限や投薬が必要な場合があります。手術の成功については、犬全体の健康と手術の適切なタイミングでの実施に依存します。
手術の術式
外科手術において、胆嚢粘液嚢腫の摘出には主に2つの方法が利用されます。それぞれ開腹手術と腹腔鏡手術です。以下にそれぞれの手術法について詳しく説明します。
開腹手術(開腹手術)
開腹手術は、従来的な手術法であり、外科医が患者の腹部を切り開き、内部にアクセスする方法です。獣医師は腹部に大きな切開を行い、胆嚢にアクセスして胆嚢を摘出します。
この手術法は広範囲にわたる視野と操作スペースを確保できるため複雑な手術に適しています。 しかし、切開部位の回復に時間がかかり、術後長いあいだ痛みが生じます。
腹腔鏡手術(腹腔鏡検査)
腹腔鏡手術は、最小攻撃攻撃手術の一種で、小さな切開をしながら腹部に腹腔鏡を挿入し、手術を行う方法です。腹腔鏡手術では、外科医が腹腔鏡の映像をモニターで観察しながら特殊な器具を使用して手術を行います。
この手術法は切開部位が小さく術後の痛みが軽減され、回復期間が短いので犬の負担が少ないです。腹腔鏡手術は技術的に要求されるスキルが高いため、執刀できる獣医師も限られます。
また、犬の個別の病状によっては開腹手術が必要な場合もあり、腹腔鏡手術が最適かどうかは、犬の特定的な状態と獣医のスキルによります。獣医師は犬の健康状態と手術の適応を評価し、適切な方法を選択します。
手術費用について
費用は20万~30万程度が相場のようですが、胆嚢粘液嚢腫の手術費用は、地域、医院の規模、犬の体重、手術の複雑さ、獣医師の経験などに依存し、大きく変動します。診断、麻酔、入院、薬、フォローアップケアなどを含めるとより高額になることも。
手術前に獣医師と相談し、予算を考慮して最適な治療計画を立てることが重要です。ペット保険を検討することも、予期せぬ医療費に備える手段としてはよさそうです。
手術の成功率について
嚢粘液嚢腫の犬の手術ですが、成功率に関してはいくつかの課題に依存します。早期発見と専門的な外科医のスキルが成功率を高める要素です。一般的に手術成功率は約80%から90%とされています。
これは腫瘍や犬の健康状態によっても変動し年齢や合併症の有無も影響を与えます。獣医師のスキルはもちろん、適切な診断が成功率を向上させ犬の健康を最大限に回復させる鍵です。手術はとても有効な治療法であり、適切なケアと監視によっても予後などの成功率が高められます。
犬の胆嚢粘液嚢腫の食事療法に適したフードとは
犬の胆嚢粘液嚢腫に対する食事療法のポイントを以下にまとめます。
まず、胆嚢粘液嚢腫の犬には低脂肪フードが必要です。脂肪代謝のため高脂肪の食事を制限しましょう。そして、高品質なタンパク質フードを提供し筋肉の健康をサポート。例えば、鶏肉や魚といった低脂肪・高品質タンパクのフードを選びます。
フードは消化しやすいものを選び、少し小分けにして複数回与えましょう。 これは食事中のストレスを軽減し、胃腸に負担をかけないためです。 さらに、食事中に犬を刺激しないように、静かな環境を提供しましょう。
定期的な経過観察も大切です。獣医師の指導後に、犬の健康状態をモニタリングし、必要に応じて食事療法のプランを調整します。また、獣医師が推奨するサプリメントを検討し、必要な栄養素を補足します。
最後に、適切な水分摂取も確保しましょう。 これは犬の水分バランスを維持するために重要です。 食事療法は以上のポイントを守り、犬の胆嚢粘液嚢腫の管理と治療に取り組みましょう。
食事療法のポイントた手作りレシピなど、食事についてもっと詳しく知りたい場合は以下のリンクページをご覧ください。
こちらの「犬の胆嚢粘液嚢腫に最適なフード【手作りレシピとおすすめ療法食】」のページです。
まとめ
犬の胆嚢粘液嚢腫は症状が出にくいため特に注意が必要です。定期的な検診や日頃の健康維持を心掛けてあげましょう。
胆嚢粘液嚢腫の犬は合併症を伴うリスクが高いため、基礎疾患の病状にあった療法食が便利です。下記のページに獣医師検索サイトと共に詳細をまとめています。
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